のほほんBookCafe 1号館

読書メモです。
図書館読書なので、話題の新作は後回しです。
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「ネイバーズ・ホーム・サービス」
ネイバーズ・ホーム・サービス
ネイバーズ・ホーム・サービス
前川 麻子


東京の便利屋兼家政婦紹介所が舞台。ヒロインはそこに勤める橋本サキ、28歳。
ごく普通の28歳の働く女性の等身大の姿が描かれています。ラッブストーリーとしてはもちろん、ビジネスストーリーとしても、派手さは無く、地味。でも、きっと、世の中の多くの女性がこんな風に生きて、働いて、恋をしているのだろうなあ。マジメに生きて、生活して、悩んで・・でも、生真面目ではないし、でもチャラチャラしてもいない。

家政婦紹介所のメンバーでは古株にあたるサキだが、仕事では「都会の隙間産業」ならではの、さまざまな人間模様を垣間見ることになる。仕事のなかみというのが、うつ病の客に1時間寄り添う、とか、遠くに住む子供たちに代わってボケた夫婦を訪問する、などなどだから。
”にせものの隣人”として、他人の家庭に入り込むなかで、その客たちのいろいろな顔を見てしまう。それは、テレビの「家政婦は見た」と同じなのだが、作品中にもでてくるように「テレビのようにはならない」ように誠実に悩みながら仕事に取り組んでいる姿は真摯。

サキだけでなく、社長のあかねや後にサキの恋人となる広志など、みなが魅力的。

ともかく、こんな会社で働きたい!! 温かいけど、けして甘くない。でも、皆が気配りができて・・
こんな会社で働ける人間になりたい。すごい幸運とか、飛びぬけた才能とか、そういうものとは無縁でも、日々のできごととちゃんと向き合っていく中で、人は少しずつ確実に成長できるんだよ、と背中をぽんぽんとたたかれているような気がしました。
| ms.Aqua | 小説 | 00:32 | comments(10) | trackbacks(82) |
小さな本の数奇な運命
小さな本の数奇な運命
小さな本の数奇な運命
アンドレーア ケルバーケル, Andrea Kerbaker, 望月 紀子

古本屋の本棚に並べられている本の独白。
仕入れられたものの、猶予はあまりない。期限までに売れなければリサイクル!

その本が、これまでの持ち主や来し方を回想します。手にとってくれそうなお客が現れると、念じてみたり。ともに並ぶ本たちへの憧れだったり嫉妬だったり・・
洋書ならではの、独特のユーモア、語り口。薄い本なのですが、本好きには見逃せない本かも。日ごろ、「本の処遇」についてぐたぐた愚痴りつづけているわたしは・・・なおさら、悩みが深くなったかも!?
| ms.Aqua | - | 23:47 | comments(2) | trackbacks(0) |
「日傘のお兄さん」
日傘のお兄さん
日傘のお兄さん
豊島 ミホ


表題作の中篇と短編がいくつか収められています。
良いという評判を聞いていたので楽しみにしていました。

装丁の淡い感じがよかったせいか「日傘のお兄さん」は、ちょっとびっくりしてしまいました。
日傘のお兄さんとは、主人公の女子中学生が幼かったころ遊んでくれたやさしいお兄さんのこと。ある日突然現れたお兄さんは、しかし、意外な一面を持っていたのでした。

これは・・物語としてのできばえがどうこう、ということ以前に、ダメでした。
どーも、ダメなんです。こういうヒトたちは。許せないので。これはもう仕方ないです、
潔癖症をきどるつもりはないのですが。このお兄さんは、それなりに悩んだりしてるし、かわいそうだな、と思う部分がないわけでもないのですが。

で、ほかの話に目を向けると、印象に残ったのは2編。
冒頭の「バイバイラジオスター」は、ほんとうに素直に若い日の恋の結末を描いています。なにしろ「パイロット・フィッシュ」を読んだ後だけに、不覚にも涙してしまいました。
最後の決断の潔さ、のようなもの。でも、だれにでも、そんな別れの思いではあるかもしれません。
もうひとつが「あわになる」
ぶっちゃけ、幽霊の話です。亡くなってから、彼女はかつて好きだった男の子のところに行きます。彼は、皮肉にも彼女が死んだ日に結婚式を挙げていました。彼には彼女は見えません。でも、奥さんには見えてしまうのです。
そして、思いがけないその奥さんの申し出。
う〜ん、それでいいのか!? 彼には知れない、でも、奥さんは知っている・・
死んだ彼女の立場になっても、逆に、奥さんの立場になっても・・・
やっぱり、わたしは、素直にいYesとは言えないかなあ・・
でも、読み物としては、ちょっと、笑ってしまう感じでした。

| ms.Aqua | 小説 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
雪沼とその周辺
雪沼とその周辺
雪沼とその周辺
堀江 敏幸

「雪沼とその周辺」   堀江 敏幸

雪沼という架空の(たぶん)北のほうのひなびた町の人々の様子を描いた連作短編集。
描かれている人物は、古いボーリング場の主、定食屋の主人、レコードショップの主人などさまざまだけど、おおむねが年配の人たち。
おちついた書きぶり。人物がさんづけで、一人称の視点ではない。それが、不器用だけど、穏やかで落ち着いたおじいちゃんやおばあちゃんたちの生き方を浮き上がらせている感じもする。
作者が40代の男性ということで、だいたい、自分の親か、ちょっとしたあたりの世代を描きだしてるわけで、なんとなく、その視点というかその気持ちも結構わかる気がするような。

また、男性作家らしいなあ、とつくづく思うのが、趣味話的こだわり。ボーリング、ステレオ、などの細かい描写が町の落ち着いた雰囲気を醸し出しているようだ。
ただね、一箇所だけ惜しかったのは・・・
亡き親友の思い出の凧を、親友の息子とあげる・・という話「緩斜面」の中で、181Pの「消火器」→「消化器」の誤植は、がっくりしてしまった。いいとこだったのになあ・・
「消化器」売ったら・・まずいでしょ(笑)


| ms.Aqua | 小説 | 02:03 | comments(1) | trackbacks(0) |
「パイロット・フィッシュ」
パイロットフィッシュ
パイロットフィッシュ
大崎 善生


「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない―。」

すべては、この言葉につきるように思えました。
主人公は、41歳の男性、山崎。エロ雑誌の編集に携わっています。ある日、19年ぶりにかつての恋人から電話がかかってくる。

今の仕事をするきっかけを作ってくれた若い日の恋人、由希子。
それをきっかけに、若い日の記憶がよみがえります。
一方で、現在の様子、危篤状態にある上司、今の恋人との出会い、仕事上のできごと、などが回想されます。

主人公と年齢が近いせいか、やはり、読みながら、どうしても、自分の若いころの記憶をたどってしまいます。出会った人、別れた人、疎遠になっている人・・

「スプラッシュ・フィッシュ」というのは、高級魚を飼うために、水槽の中の生態系を作り上げるために飼われる、“捨て魚”みたいなもの、くらいに理解していました。最初のあたりで、もっと詳しく専門的に、かつわかりやすく書かれていたはずですが、なにしろ、熱帯魚に一切興味のないわたしは、いまいち理解できず通りいっぺんに読み進んでしまいました。この言葉の本当の意味するところは、全体を読み進むうちにわかってきました。

であった人の記憶は消えない。たとえ、ひとときのかかわりでしかなかったとしても、それがわたしたちの人生に与えている影響は少なくない。
「一期一会」というのでしょうか。

ふと、思いました。
わたしは、大事な誰かをただの「捨て魚」にしてこなかっただろうか?
ほんとうに大事な「スプラッシュ・フィッシュ」のことを忘れてはいないだろうか?
さらには、究極のスプラッシュ・フィッシュである「人の親」になっていないわたしは、それでも誰かのささやかな「スプラッシュ・フィッシュ」になりえているだろうか、と。

生きるということ、出会うということをおろそかにしないということが、どんな人生のなかにも幸せをもたらすものなのかもしれません。

それにしても、最後のほうの、過去と現在を直接に結びつけるできごとは、わたしにはちょっと余計に思えました。因縁話めいたくくりかたはしなくてもよかったのでは?その末路が不明のままに終わっているだけに、惜しいなと思えるのですが。

| ms.Aqua | 小説 | 00:04 | comments(0) | trackbacks(0) |


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